米国カリフォルニア大学のエリザベス·ステロー(Elizabeth Stelow)博士の研究結果によると、舌で舐める犬の行為は意思疎通と情報収集のためだそうです。つまり、人や他の犬を舐めることで自分の意思を伝えたり、相手の匂いや味を把握して相手の状態を知るということです。では今回は、犬が自分や相手を舌で舐める理由について体の部位ごとに見ていきます。
目次
自分の体
足裏
自分の足の裏を舐める理由は、大きく2つに分けられます。カーミングシグナル、つまり、気持ちを落ち着かせるため、または湿疹などの皮膚疾患のためです。ストレスを受けたり緊張したときに足の裏を舐めると気持ちを落ち着かせることができ、退屈したときに舐めると気分転換になるそうです。
一方、乾燥した環境であったり、入浴後に足の裏の水気がきれいに取れていなかったり、頻繁な入浴による皮膚炎や湿疹などの皮膚疾患を患った場合に、足を舐めることがあります。ストレスや退屈な状況が改善されない場合や飼い主が犬の足裏の皮膚疾患を放置した場合、深刻な皮膚疾患や壊死、足の爪が剥がれる事態に発展する恐れがあるため、足の裏を舐めていないか注意して観察する必要があります。
生殖器
足裏と同じくカーミングシグナルのひとつとして、自分の気分を良くするため、あるいは生殖器疾患になった場合に生殖器を舐めます。肛門腺の肛門腺液が溜まっているせいで不快感を感じた場合も生殖器付近を舐めます。その場合は、排便をした後、床にお尻をこすりつけることもあるので、そういう時は肛門腺をきれいに絞ってあげなければいけません。それ以外にも、生殖器疾患や寄生虫感染、アレルギーなどの問題もあり得るため、頻繁に舐めていたり、長時間生殖器周辺を舐める場合は診察を受けてください。
鼻
鼻を舐める理由は様々です。1つ目に、足裏や生殖器を舐めるのと同様にストレスや緊張をほぐすために鼻を舐めます。叱られたり、慣れない環境にいるときに鼻を舐めるようであれば、ストレスを受ける状況が長く続かないようにしてあげましょう。
2つ目に、匂いをよく嗅ぐために鼻を舐めます。犬は優れた嗅覚の持ち主で有名ですが、鼻が潤っていないとその能力を十分に発揮しにくいです。鼻から分泌される粘液は空気中の臭いの分子を粘膜に付きやすくして臭いを嗅ぎ分けます。そのため、犬は匂いをよく嗅ぎたい時に鼻を舐めるのです。
3つ目に、熱、脱水症状、アレルギー、鼻炎など健康に異常が起こると、鼻の表面が乾燥します。その場合に、乾いた鼻を潤すために鼻を舐めることがあります。逆に風邪をひいて鼻水が出てきたときも、鼻水を拭き取るために舌で鼻を舐めます。
それ以外の体の部位
犬が体の隅々を舐めるのは、毛についたほこりを取り除くグルーミング行動の場合があります。一方、けがをしたりアレルギーや皮膚の病気でかゆい場合もその部位を舌で舐めたりします。これは感染リスクや既存の疾患を悪化させる可能性があるため、早めに処置してください。
人の体の部位
犬が人を舐める理由は、舐める行為が犬の脳のエンドルフィン分泌を促すからです。それによって犬が幸せを感じるため、人を舐めるようになります。また、相手への愛情表現として舐める行為をします。外出から帰ってきた飼い主を舐めて喜びを表現したりもします。他にも、人の汗から出る塩気が犬の興味を引いたり、汗やフェロモンといった相手の分泌物を舐めて分析することで、相手の情報を得ることができます。
足
犬が飼い主や訪問客の足の匂いを嗅ぎ、舐める理由は相手の情報を得るためです。犬は臭いの分子をそれぞれ分離して把握できるので、人の足を舐めると、どこに出かけたのか、どんな環境で暮らしているのかなどを知ることができます。
顔または口周辺
犬はリーダーの口周辺を舐めながら信頼感と服従心を見せるそうです。飼い主を自分のリーダーとして犬が受け入れているなら、口の周りを舐めて絆を築こうとするでしょう。
手
汗、食べ物、化粧品など様々な匂いを嗅ぐことができる手は、犬が情報を得るのに最も良い部位かもしれません。手を舐めることで相手の情報を得ると同時に、相手に対する愛情や信頼を表現しています。
このように、舐める行為は飼い主と絆を築くための行動なので、舐められるのが嫌だと飼い主が犬を叱ってしまうと、犬を傷つけてしまいます。舐める行為をやめさせるためには、舐め始めたら淡々と席を離れたり、断固とした声でその行動をやめさせ、舐める行動は関心を得られないということを伝えましょう。
以上、犬の舐める行動について調べてみました。ペットと幸せな時間を過ごしてください。
